辻斬り書評  -43ページ目
<< 前のページへ最新 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43

「イラクとアメリカ」 酒井啓子

本書は2002年8月20日刊であり、現況を描くまでには至っていない事を記しておく。そのうえで、強くこの本を推奨したい。なぜ、アメリカとイラクはこうも対決するのか、なぜイラクのフセイン体制は生き残り続けるのか、なぜイギリスはアメリカと共同歩調をとるのか、なぜ仏露中は米英に反対するのか、などという疑問が、するすると解きほどかれていく。それは一種の快感とまで言えるまでに、明瞭に説明されている。一冊の書のみでこの問題をカバーできるとは言わないが、イラク問題を立体的にとらえるうえで必読の書である、と断じたい。少なくとも、この百年のスパンで俯瞰することが肝要だ。

オススメ度★★★★★

著者: 酒井 啓子
タイトル: イラクとアメリカ

「ブラック・ダリア」 ジェイムズ・エルロイ

アメリカ暗黒小説界の魔犬を自認する鬼才が、1947年のアメリカに起きた猟奇殺人事件を題材に放つ、「L.A四部作」の嚆矢。事件の渦に引き付けられた登場人物たちは、呪縛のようなそれが引き金となって、それぞれの運命に向かって突き進んでいく。終焉に近づくにつれ、読者はその迫力と狂躁に圧倒される筈だ。破滅を胚胎する物語を書かせたら、エルロイはおそらく当代でもぬきんでた存在であろう。


オススメ度★★★☆☆


著者: ジェイムズ エルロイ, 吉野 美恵子, ジェイムズ・エルロイ, 吉野 美恵子
タイトル: ブラック・ダリア

オンライン書店bk1「通常書評」採用分(難易度C)

オンライン書店bk1「今週のおすすめ書評」掲載分(難易度A)

オンライン書店bk1「ジャンル担当者のおすすめ書評」掲載分(難易度B)

「北人伝説」マイクル・クライトン

「海狼伝」白石一郎

「国書偽造」鈴木輝一郎

「蛇神降臨記」スティーヴ・オルテン / ノストラダムス系?

高島俊男「本が好き、悪口言うのはもっと好き」 / 字から事象を読み取る

「海のサムライたち」白石一郎 / 海賊小説のブックガイド

「愛国の旗を掲げろ 海の覇者トマス・キッド4」ジュリアン・ストックウィン / 文句なしの大傑作!

「ニューロマンサー」ウィリアム・ギブスン / 超空間えんずい斬り!

「酒仙」南條竹則 / 芳醇なる教養ファンタジー

「傭兵ピエール 上下」佐藤賢一 / ジャンヌ・ダルクの肖像と中世フランス貴種流譚説

「餓えて狼」志水辰夫 / 四方、味方なし

「レイジング・アトランティス」トマス・グレニーアス / 南極ピラミッド、極寒のサバイバル!

「ロゴスの名はロゴス」呉智英 / ロンリーな論理

「ヒトはなぜペットを食べないか」山内昶 / タブーの人類学

「チベット旅行記 抄」河口慧海 / チベット潜入! 明治精神の体現者

「経済ってそういうことだったのか会議」佐藤雅彦 竹中平蔵 / 血の通った経済学議論

「ブッシュの戦争」ボブ・ウッドワード / アフガン戦争はどうデザインされたのか

「惑星カレスの魔女」J・シュミッツ / スペース・オペラとSFの幸せな融合

「ソラリスの陽のもとに」スタニスワフ・レム / 共存か敵対かの二元論を超えた、遭遇SF


<< 前のページへ最新 | 39 | 40 | 41 | 42 | 43