「鬼流殺生祭」貫井徳郎 / 遊び心の頓挫?
貫井徳郎には、東野圭吾や宮部みゆき、真保裕一などに次いで、質の高いミステリを書く現代作家という印象がある。
その貫井が、明治を舞台にしたものを書いているという。
もっぱらエンタメ領域を主戦場にしているとはいえ、一定のレベルに達している作家が近代日本の手相をどう読み、どう再構築するのかにいくらかの興味を覚え、本書を読むことにした。
というのは後付けで、たまたま家族の本棚にあったからである(笑)。
以前に読んだ小説がまずまずだったので、今回もそれなりの期待感はあった。
あった。
うん。
さすがに読みやすさは折り紙つき。引っかかりなくスラスラ読める。
伝奇的な要素も、ほどほどの出来。
でも、それだけ。
たしかに文化の変遷期という舞台設定が必要となるネタではあるものの、歴史風景を生かしきれなかった感が残る。
なにより、腕の確かな作家であるからこそ鼻に付いてしまう蛇足がいくつか見受けられ、結果的に中途半端な読み味になってしまった。
これでは、単にライトな京極夏彦 にすぎない。
新作を待ちきれない京極ファンがほんの手遊びに読むぶんには、まあお誂え向きかもしれない。
作者は、どうせならもっと思い切って暴れたほうがよかったのではないか?
品行方正なイメージをかなぐり捨てて。
オススメ度★★★
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