「三国志2・3・4・5」北方謙三 / スルスル読んでしまおう
あいかわらず 、つまらない。
結局、北方謙三には群像劇が向いていないということなんだろう。
なんといっても、著者が神の視座に立ちすぎていて戦国の脈動が感じられないのが致命的。
劉備陣営の行動なんて、巨視的すぎてほとんど予言者のレベルだしねえ。
対照的に、機能集団たる曹操陣営が非効率的な他陣営を見下しつつ撃破していく流れが浮かび上がってくるのは、おそらく著者自らへのブラックユーモアなんでしょう(笑)。
ただ、五斗米道の張衛のくだりだけは、読ませるものがある。
特に第5巻で黒山の張燕と夜話を交わすシーンがあるが、あそこは秀逸の出来。
自身の野望におののきつつも模索を続ける若きリーダーの気負いと、野望に翻弄され疲れ果てた老人の諦念との対比が、対峙する両者に差し挟まれた焚き火の比喩によって、見事に描き出されている。
国語の教科書に載っていても不思議ではないくらいの完成度。
で、最初の結論に戻るのだが、北方謙三はひとりの男の主観を軸にして筆を進めたほうが、よほど生きる作家であろう、ということで。
以上。
オススメ度★★
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