「バッド・ビジネス」アンソニー・ブルーノ / はみだし者の行動原理とは?
- なんとなく復活しそうな気配の我がブログであります。
- いや、どうかな?(笑)
今回の獲物はアンソニー・ブルーノの「バッド・ビジネス」。
鼻つまみ者のFBI捜査官コンビが悪党をやっつけるという、まー、アメリカのクライムノベルではありきたりなお話です。
この本はシリーズ4作目にあたるんだけれど、わたくし1と3は読んでおりません。
ていうか読む気もありません!
や、別につまらなくもないんだけどねー。読まなきゃならん本は他に山ほどあるし。
それでも成り行き上2冊こなしたくらいだから、そこそこ悪くない。
ではどこがよかったかというと、主役2人のキャラクターに尽きる。
イタリア系アメリカ人で結構2枚目なトッツィと、その相棒で退職間際の老捜査官ギボンズの両名が活躍するのだが、こいつらが一筋縄ではいかないのだ。
トッツィはとにかく性格が粗っぽくてトラブルばかり起こすパンクロッカーみたいなヤツだし、片やのギボンズは頑固一徹で頭が硬く、無骨無愛想なうえに口を開けば憎まれ口ばかり。
直属の上司からも疎まれる文字通り鼻つまみ者のこのコンビなのだが、いざ事件となるとトッツィの直観力とギボンズの粘り強さがうまく機能して、強引に突破してしまうのだ。
つまり芯に熱いものを持っているコンビということになるのだが、それよりも重要なのはこいつらが正義感や職務感で動いているわけではないところだ。
もちろんそれらが彼らを突き動かすマターの一部を成しているのは当たり前だが、ほとんど生来の負けん気がために駆け回っていると言っていい。
今回のケースではトッツィが麻薬組織に嵌められて大量殺人犯に仕立て上げられそうになるから少々事情は違うのだが、自分のために戦う意味では同じだろう。
僕は主人公が他人のために敢然と死地に飛び込むような古色蒼然としたクライムノベルやらハードボイルドには、もう興味がない。
仮にそのような展開になったとしても、主役がそう選択せざるを得ない動機付けがしっかりされていない物語は、とても同調して読み進めることができないのである。
だってそうじゃない?
見ず知らずの依頼者(謎めいた美女とかさー)や、職責がゆえに受け持たなきゃならない被害者のために本当に命をかけられると思う?
美談としてはアリだし、世の中には確かにそういう偉い人もいるけれど、おれ個人は無理だもの。
だから、自分に引き寄せて是か非かで判断してしまうわけ。
家族の命がかかっているとか、どうしようもない借金苦とか、のっぴきならない理由がないとね。
誇りだとか大義なんかを出してくるようでは、てんで話になりません。
そういう抽象的な概念に命を張れる人間って、見方を変えればファシズムに絡めとられる危険性に通じているんですぜ。
しかも大抵の場合は無自覚なんだから手に負えない。
よくできた犯罪小説はその辺りの機微に長けているからおもしろいんだよねー。
主人公の立場が犯罪を行う側であっても、それを取り締まる側であっても。
だから、フロスト警部シリーズやハップ&レナードが好きなんです。
ハップとレナードなんか、警官どころかタダの落伍者のくせに毎度とんでもない事件に首を突っ込む破目になるしね。
本シリーズの特徴は善玉と悪玉が画然としていて非常にわかりやすい点と、そこそこ及第点を与えられるキャラクター造形にある。
それ以外は典型的なハリウッド流サスペンス。カーチェイスあり、事件を間にはさんでの恋人との綱引きあり、裁判あり、マフィアあり。
気になったら読んでちょーだい。
- アンソニー・ブルーノ, 玉木 亨
- バッド・ビジネス
オススメ度★★★
- R・D・ウィングフィールド, 芹澤 恵
- 夜のフロスト
- R.D ウィングフィールド, R.D. Wingfield, 芹澤 恵
- クリスマスのフロスト
- R・D・ウィングフィールド, 芹澤 恵
- フロスト日和
- ジョー・R. ランズデール, Joe R. Lansdale, 鎌田 三平
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